自然栽培・・・、
農薬も肥料も使う慣行農法(いわゆる一般的な農法)、あるいは有機肥料は使うけど農薬は極力使わない有機農法等と比べ、正直、労力に比べて効率が悪いです。
耕さない、肥料もやらない、水もやらない上にタネから育てている我が家では、本当に作物の持っている本来の生命力頼みなので、育ってくれる作物は育つのですが、新しい作物はなかなか結果が出ないし増えません。
この「タネから育てる」というのが本当に難しく、ホームセンターで売っている苗の状態まで育てるのは至難の業で、あそこまで育った苗は植える時期もそんなにシビアではなく、そもそもホームセンターで売っている時期がその苗の植える時期でもあるので、買って来て植えてしまえば割と大体上手く育ってくれるものです。
これがタネから育てるとなると別次元の難易度で、もちろんタネ袋の裏に書いてある植える時期を参考にはするのですが、天候の状況は毎年違うので、ちょっと植える時期が早すぎて温度が足りないと芽を出さないし、ちょっと遅すぎて気温が上がりすぎても芽を出さない・・・、ここ数年、毎日最高気温と最低気温をノートに書いて気温の傾向を見ながらせっせとタネを植えても、新しい品種はなかなか増えません。
無農薬・・・、素敵な言葉ですが、それはどういうことかというと、薬の力に頼らないので人間の手で害虫を駆除するということを意味します。
人間の都合で「害虫」、「益虫」と呼ぶのも随分と身勝手とは思いますが、自分で野菜を育ててみると世の中にはこんなに色々な生き物がいるんだと気付かされるものです。
枝豆を育てているとカメムシが出ること出ること。
枝豆には早生(わせ)や晩生(おくて)など、栽培期間の種類があるのを知らず、最初は晩生の品種を植えていました。
そうしたら晩生の枝豆の最盛期とカメムシの繁殖期が上手いこと重なったのか、マルカメムシが大発生してえらい目にあいました。
昨年くらいからは、カメムシの繁殖期の前に収穫できそうな早生種の枝豆を植えていますが、それでもマルカメムシは出ますねー。
マルカメムシはビックリするとポロッと落ちる習性があるので、その習性を生かしてビックリさせては小瓶に落とすという方法を編み出し、今ではマルカメムシの駆除がすっかり上手くなりました。
キュウリ、ズッキーニ等のウリ科の作物の葉っぱをムシャムシャ食べるウリハムシはカメムシよりも厄介で、人間の影を察しただけで飛んで逃げてしまうので、今では空中を飛んでいる時に素手でサッと捕まえる方法を編み出しました。
毎朝起きるたびにオクラの葉っぱをクルンチョとしているワタノメイガの幼虫もバカにできないし、春先の食欲旺盛なヨトウムシ、すぐにコロニーを作って繁殖するカタツムリも厄介です。
カタツムリは夜行性で、もちろん葉っぱの裏にいることもありますが、昼間の間は作物の根元付近の地面の中に巣食っているというのも初めて知りました・・・。
カタツムリが地面の中にいるなんて想像もしていませんでした・・・。
ここまで読んでみて、
「どうしてそんな面倒臭い自然栽培なんてやってるの!?」
と思われる方もいらっしゃるでしょうし、むしろそう思う方が普通だと思います。
ただ、私はこの面倒臭い自然栽培を4年くらいやってみて、もしかしたら自然栽培の醍醐味は収穫だけではないのではと感じてくるようになりました。
だんだん出来てきた我が家の生態系
農薬も除草剤も使ったことのない我が家の庭というか家庭菜園は、まさしく雑草天国で昆虫天国です。
中にはせっかく育てている作物を食べてしまう迷惑な害虫もいますが、その害虫を捕食してくれる生き物も増えてきました。
残念ながらカメムシやウリハムシを食べているところは見たことがありませんが、カマキリはバッタを食べてくれるし、ジョロウグモも我が家で繁殖して色々な虫を食べくれます。
ジョロウグモ、見た目が苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、自分で野菜を育て始めるとこれほど頼もしい相棒はいません。
最近では駆除したアオムシを与えたりして、せっかく住んでくれたジョロウグモを育てるようにしています。
色々と住み着いてくれた生き物の中でも私のアイドルは、何と言っても見ていて楽しいニホントカゲです。
我が家の庭には少なく見積もっても5〜6匹のニホントカゲ が住んでいるのですが、こちらから何かイタズラをするわけではないので、段々と人間に慣れて来たというか怖がらなくなって来ました。
最近は芝生の真ん中でデロンと横たわって日向ぼっこしたりしているので、本来警戒心が強いはずなのに、野鳥にさらわれたり食べられたりしないか心配になるほどです。
この後どうするんだろうとジッと観察していると、アクビをしたり短い前足を伸ばして背中を掻いてみたり、ただの爬虫類とは思えないほど色々な表情を見せてくれて愛嬌があります。
とにかく満腹中枢が壊れているのじゃないかと思うくらい食欲旺盛で、自分と同じくらいの大きさの太いミミズを口に咥えて振り回していているのを見たことがあります。
さすがにそんなに大きいのは食べれないだろうと見ていると、一体どこに入ったのか分かりませんがすっかり丸呑みにして、胃腸の調子を整えているのか膨らんだお腹をゆっくりうねらせて日向ぼっこしてると思ったら、すぐに他のエサ食いついていてビックリしました。
冬の冬眠に備え、温かいうちは食べるだけ食べて準備しているのでしょう。
自分で体温の調整ができないトカゲにとって日向ぼっこは消化に大事なようで、観察しているとフンフンと地面を鼻先でほじっては何かを食べて日向ぼっこ、また何かを食べては日向ぼっこを繰り返しています。
いや、本当に可愛らしいというか、見ていて飽きません。
いつまでも見てられます(笑)。
不思議とどのトカゲも庭の端を左回りにグルグル回るのが好きなようで、時々他のトカゲと遭遇してはキャッと喧嘩してどちらか片方がシュルシュルと逃げていきます。
一匹でいる時は割とノンビリしていますが、視界の半径15センチから20センチの範囲で動くものには自動的に襲いかかるようにできてるようで、一度大きなカマキリに襲いかかって振り回しているのを見たことがあります。
この口に咥えて振り回すというのはトカゲの最大の攻撃のようで、姿は見えなくても時々庭の隅の茂みの中で「パタパタパタッ」とトカゲが獲物を捕らえて首を振っている音が聞こえてきます。
こんなアグレッシブなニホントカゲも炎天下の日は暑すぎるのか、ほとんど見かけることはありません。
先日買い物に行こうと玄関を開けたら、北側の陽の当たらないヒンヤリとしたタイルの上で寝そべっていたので、トカゲはトカゲなりに暑さ対策をしているようです。
暑い日が続いてしばらくトカゲを見れなくて寂しい思いをしていると、たまに雨が降った翌日に一斉に庭に顔を出してきて、アッチコッチであくびをしながら日向ぼっこをしているのを見ると幸せを感じます(笑)。
昼間のアイドルがニホントカゲ とすると、夜の間のアイドルはヒキガエルでしょうか。
何しろヒキガエルは夜行性なので、ほとんど存在感はないのですが、朝方に庭に出ると眠そうにノッシノッシと歩いて、自分の寝床に帰っていく姿を見ることができます。
ニホントカゲ は普段どこにいるか分かりませんが、ヒキガエルは行儀がいいのか大体茂みの奥の定位置にチョコンと窪みを掘ってそこに座って寝ています。
我が家の庭はよっぽど食べ物が豊富なのか、ニホントカゲ にしてもヒキガエルにしても、いつ見ても丸々と肥えていて、見かけると嬉しくなっちゃいます。
我が家の新しい仲間 | カナヘビの子
さて、我が家の生態系は最初から今のようだったかというと、そういうわけはありません。
最初の年は家庭菜園を持てたことが嬉しくてショベルでほじくり返して耕したり、近所で路地販売している完熟牛糞堆肥をすき込んだり、雑草も根っこから抜いたりしていました。
タネから育てるという発想もなかったので、普通にホームセンターで自分の食べたい野菜の苗を購入して植えていました。
今考えると無農薬の有機農法だったのでしょうか。
普通に収穫もできて味をしめた私は、もっと健康に良い農業はないかと色々調べるうちに自然栽培の存在を知り、現在に至ります。
「雑草を抜かずに成長点で刈って緑肥にする」と本に書いてあれば、これぞ自然栽培と、春先に庭全体の雑草を刈って緑肥にしたら、夏になるとむき出しの土壌が砂漠のようになって作物が枯れてしまったりもしました。
その後、比較的穏やかな冬草(冬の雑草)を刈らずに残しておくと、いかつい夏草(夏の雑草)を抑えることができたり、春先にせっかく植えた作物を食い荒らすヨトウムシは、作物だけ植えていると作物だけ食べて被害が大きくなりますが、周りに雑草が一緒に生えてると好き嫌いのないヨトウムシの食欲は雑草にも向かうので、食害が分散されて作物の被害が少し減ったりと、土をいじらない(耕さない)で雑草を生かすスタイルに変化していきました。
土をいじらないでおくと何が変わるかというと、ミミズが増えましたねー。
夏の暑い時期は深いところに潜っていますが、春先にヨトウムシの駆除をしようと土の表面を引っ掻いていると、どこを引っ掻いても太くて大きいミミズがゴロゴロ出てくるようになりました。
ダンゴムシやゲジゲジ等、色々細かい虫もいっぱい住み着くようになると、それらを食べるトカゲが増えてきました。
トカゲがヨトウムシを掘り起こして食べているところを見た時は感動しましたねー。
丈の低い雑草を刈らずにそのまま残しているので、隠れる場所というか、姿を晒さなくても移動できる我が家の庭は居心地が良いのかもしれません。
そういうわけで、いつの間にか我が家の庭の中で食物連鎖というか生態系が出来てきた感じです。
先日、毎朝恒例のオクラのワタノメイガチェックをしていると、何やら根元の方からシュルシュルと這い上がってきます。
イモムシにしては動きが早いし、新手の害虫かなと観察していると、オクラの蕾のところまで登ってきました。
よくよく見てみると、ちっちゃいカナヘビじゃありませんか!
おそらく今年の春に生まれた子でしょうか、小指の先くらいのちっちゃいちっちゃい子です。
目もクリンとして可愛いし、ニホントカゲに比べると、ちょっと長い指先を器用に使って登ってきますが、まだ筋力が十分じゃないのか頼りない感じで、ちょっと震えるようにチュルチュルと登ったり降りたりしています。
最後に居心地のいい場所を見つけたのか、遠くの方の匂いをツーンと嗅ぐような顔をしてオクラの葉っぱの上で日向ぼっこを始めました。
その姿の可愛いこと可愛いこと(笑)。
今まで我が家でカナヘビを見たことがなかったので嬉しかったです。
歯もないし咀嚼するほどアゴの力がないトカゲの食事法は丸呑みしかないので、口に入る大きさのモノしか食べられません。
大人になって口の大きさが大きい方が食べるものも増えるので生存確率も上がるし、繁殖期のオス同士の争いもお互いの口の大きさで優劣が決まるそうです。
生まれたばかりの幼体は口が小さくて食べられるものが少ないので、その大半が大人にならないうちに消えていってしまうとのこと・・・。
このカナヘビの子にも、厳しい自然環境が待っていることでしょう。
なんとかいっぱい食べて大きくなって、ちゃんと冬眠を成功させて生き残って欲しいです。
これからの時期は例年オクラにアブラムシが大発生するので、サイズ的にもアブラムシを食べてくれたら嬉しいですねー。
我が家の庭では、気づかないところで新しい仲間が増えたり減ったりしているのかもしれません。
カサコソと色々な生物がうごめく庭を眺めていると、我が家の庭(家庭菜園)は作物の収穫だけに特化している「畑」という感じではなくて、あくまでも色々と生きている自然の一角を借りて害虫、益虫、雑草等々と共有しながら作物を育てさせてもらってる感じがしてきます。
もちろん植えるものがなんでも育って、たくさん収穫できるのが理想的ではあるのですが、それはそれで自分だけでその空間を独占してしまうのは人間のわがままのような気もするし、何年もかけて作ってきた我が家の庭は、土にも生き物にも無理をさせてない感じがして、それはそれで愛しいなと思うのです。
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