S.Yairi | YD-308 カスタム


一線を超えてしまったギターオタクには色々なタイプがあります。


王道はマーチン、ギブソンの現行モデル、もっと突き抜けるとヴィンテージと呼ばれる戦前(第2次世界大戦前)のギターの愛好家、それ以降の50年代、60年代のギター、あるいは国産の古いギターを愛でる方もいらっしゃるだろうし、あえて合板で作られたアコギを集めてらっしゃる方もいらっしゃるでしょう。


これだけは本当に趣味の分野なので、優劣はつけられません。


私は、もともとエレキギターを弾いてましたが、バンドを組むような年齢でもなくなり、アコギなら一人でも楽しめるかなと、アコギの道に入ってしまいました。


福生のスリーシスターズという16号沿いの中古楽器屋さんで、5万円の予算内で買えるアコギを5本ほど試奏させてもらい、候補に残ったのがS.YairiのYD-303というモデルと、モデル名は忘れましたがK.Yairiのアコギでした。


どちらも70年代製のサイド、バックはハカランダの合板のギターで、K.Yairiの方が状態というか見栄えが綺麗だったのですが、S.Yairiは弦一本1本の分離が良く、単音で弾いても音に存在感があったので、ブルースを弾く私にはちょうどよいと、YD-303を選びました。


ハカランダ合板というと、ハカランダの化粧板ぐらいにしか思ってませんでしたが、外見はボロボロだったものの、前のオーナーが良く引き込んでくれたのか、良くなるギターでした。


S.Yairiというと、分離が良い分コードで弾くとややまとまりがなく、若干ネック音痴ですが、70年代製特有の作りが頑丈で、音量豊かに「ゴツン」と鳴ってくれるのが特徴だと思います。


※近年、息子さんが復刻した新しいS.Yairiは、弾いたことがないので分かりません。


このYD-303は入り口としては十二分なギターで、ここから国産アコギの魅力にはまってしまいました。


私のギターオタク履歴を振り返ると、70年代製の国産アコギにはまってしまったS.YairiのYD-303以降と、YD-308を購入した日にマーチンの1969年製D-45を弾いてしまった以降に分けられます。


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70年代と80年代のYD-308

私は自分のYD-308を購入するまで、幸運なことに70年代に作られたポジションマークがドットの時代のギターを2本と、80年製の私が購入したポジションマークがヘキサゴンの時代のギターを試奏する機会に恵まれました。


70年代製と80年代製の大きな違いは、ネックの太さと塗装です。


私が試奏させてもらった70年代製のネックは、2本とも太めで平たい形状でしたが、80年代製のネックはエレキギター並みに細くてかまぼこ型、非常に弾きやすいです。


70年代製の塗装は、トップのみラッカー塗装で、サイドバックがウレタン塗装、2本ともトップにウエザーチェックがガッツリ入って貫禄がありました。


80年代製はオールウレタン塗装です。


S.Yairiというメーカーは、ネックの永久保証をしているくらいネックの強度に自信があったメーカーで、70年代に作られたギターは、わざわざ1フレット目の指板を割らなければネックの調整が出来ない作りでした。


今でこそインターネットが発達して、70年代製のS.Yairiはトラスロッドがサウンドホール側ではなく、1フレットの指板を割るとトラスロッドが内蔵されているということは検索すれば調べられますが、私が試奏させてもらったギターはそれを知らずに調整しようとしたのか、指板を削って無理やり調整した形跡があり、ネックが捻れてないのに指板が平らではないという残念な状態でした。


80年代製は、現在のアコギのようにサウンドホール側のトラスロッドでネックを調整できるので楽です。





YD-308はよく寝るギター?

アコースティックギターは、弾かれて初めて楽器になるわけで、弾かなければただの木です。


引き込めば鳴るようになるという特性もありますが、反面、しばらく弾いてないと鳴らなくなります。


これをアコギマニアの間では「ギターが寝る」というのですが、YD-308はとくに寝やすいギターです。


というのも、私が試奏したYD-308は3本とも、それほど鳴るギターではありませんでした。


珍しいギターなので、滅多に入荷するわけでもなく、ネットでコツコツ在庫情報を調べては、「あ、あそこの店に入荷した!」と喜んで御茶ノ水に試奏に行ったのですが、どれも「ん〜、これが憧れのYD-308なんだ・・・」という音でした。


なんていうか、音がこもってしまってる感じというか、当時私が持っていたYD-303の方がよっぽど鳴る感じでした。


その中で80年代製のYD-308は、比較的直近まで弾かれていたのか、しっかり音がするものの音量が小さく、「弾きこみに時間がかかるかもな・・・」という感じでした。


そんな状態で69年製D-45を試奏させてもらって、ぶっ飛んでしまったわけですが(笑)。


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YD-308の音

今でも半年くらい弾かないと寝てしまう私のYD-308ですが、購入後、家で数時間弾いていると、みるみる音が変わっていきます。


購入した時に薦められたマーチンのライト弦を張っていたのですが、高音が鳴りすぎて音がギラギラして耳障りです。


ダダリオのフォスフォー弦に張り替えたら、ギラギラ感が少し落ち着きました。


YAMAHAでもHEADWAYでも、国産ギターの上位機種は中高音がよく出て硬い音が特徴なのですが、YD-308の高音と音の硬さは突き抜けていて、刃物のような音がします。


これはサイドバックのハカランダよりも、見たことのないほど木目の詰まったトップのジャーマンスプルースが効いていると思います。


「硬い木でギターを作るとこうなります」という感じで、ちょっと金属的ですらあります。


ここでやめておけばいいものを、「このYD-308を現代の技術でカスタムして、あの69年製D-45に勝てないだろうか」と思ってしまったわけです。





カスタムした現在の音


カスタム内容は、音を阻害しそうなプラスチックを全部木製に変えて、ラッカー塗装するといった内容です。


セルバインディングをウッドバインディングに、プラスチック製のピックガードを木製に変更、もともとの装飾もD-42にしたいのかD-45にしたいのか、見た目が中途半端だったので、サイドにもアヴァロンインレイを入れてウレタン塗装を剥がし、ラッカー塗装にしました。


今考えても正気の沙汰ではないですが、スリーシスターズのおばちゃんに紹介してもらったギター職人の方に、無理を言ってカスタムしてもらいました。


それから10年くらい弾いていますが、音も育って、今では私の一番頼りにしている相棒になりました。


現在の音の特徴は、まず、弦に触れてから音が出るまでの反応が良いです。


反応がいいと、ギターが弾いてもらいたがってる感じがして弾いてて楽しいです。


音が前に出る貫通力は私が持っているギターの中でも一番強く、しかも中高音寄りの独特な硬さの音が前に飛ぶので、他のギターと一緒に弾いても音が埋もれることはありません。


チョーキングやビブラートをした時の粘りは、恐らくバックのハカランダくるものと思われますが、非常に粘りのある音がします。


「ゴツン」と鳴る低音の無骨さもあるし、汚すように弾けば汚れた音、シャラーンと弾けば高音の綺麗な音も出せる汎用性の高いギターに育ちました。


70年代の雑誌では「S.Yairiのギターは最もマーチンと近い音がする」と書かれたこともあるようですが、マーチンとは似ても似つかない、もっと野生的でギブソン寄りの音かもしれません。


今、手元に好対照のYAMAKI−1200があるので、次はYD-308との比較レポートをしてみたいと思います。


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