ジャパニーズビンテージギター・・・、一般に懐かしい昭和の時代に作られたギターを言うのでしょうか。


そもそも60年代、70年代のフォークギターブームが過ぎ去り、ハードロック、ヘビーメタル、パンク等々、次々と新しいギターヒーローが生まれて、時代がエレキギター一辺倒に傾く中、その後のアコギの復興に一役買ったのは、MTVのアンプラグドによるところが大きいように思います。


私もそうですが、元祖ギターヒーローの、エリッククラプトンのアンプラグドにやられてしまった人も多いのではないでしょうか。




どう見ても古ぼけたようにしか見えないアコギがあんなに鳴って、しかもアコギなのにエレキギターのように弾きこなすクラプトンの衝撃。


何かエレキギターでは表現しきれない、濃厚な「音楽」を感じたものです。


そして元祖アコギと言えばマーチン、ギブソン、どちらも創業者の名前を冠したギターメーカーですが、ドイツからアメリカに移住したマーチンさんがギターを作り始めたのが1833年、ギブソンさんがマンドリンを作り始めたのが1894年、どちらも歴史を遡れば始まりは19世紀・・・。


日本で本格的に鉄弦アコギの製造が始まったのか、私にはよく分かりませんが、マーチン、ギブソンに比べてしまうと歴史が浅く、とくにフォークブームだった70年代はギターの形さえしていれば売れる時代だったので、昨日まで下駄を作っていた会社が突然ギターを作り出したり、高価なマーチン、ギブソンのギターを見たこともないのに独自の解釈でギターを作ったり、玉石混同の本当に面白い時代だったのでしょう。


作りが荒いギターが多かったのも事実で、それから40年〜50年くらい過ぎた現在、ちゃんと弾けるコンディションで残っているギターの方が少ないのかもしれません。


ジャパニーズビンテージギター・・・、歴史の浅い日本製のアコギに使う言葉ではないと言う方もいらっしゃるでしょうし、中古楽器屋さんが煽り文句として作った言葉だと言う方もいらっしゃるでしょう、あの時代の日本製のアコギにしか出せない音がすると言う方もいらっしゃると思います。


良質な木材が豊富にあった時代なので、製造技術はともかく現在のギターよりも良質な木材が使われていたのも事実でしょう。


当時ですら希少材だったハカランダ単板は、どこのブランドでも自社のフラッグシップモデルにとっておくものなのに、YAMAHAのL-10前期型は惜しげも無くハカランダ単板を使用していたなんて、今となっては考えられません。


一方、どんな高級機種でもネックがワンピースではなくツーブロックだったのは、良質な木材が豊富な時代だったはずなのに不思議です・・・。


当時ワンピースネックだったのは、ちょっと遅れてやってきた百瀬さんのヘッドウエイくらいだったのではないでしょうか。


私はもともと日本製ビンテージアコギに興味があったわけではなく、当時近所にあった福生のスリーシスターズで、おばちゃんに勧められたS.YairiのYD-303を購入したのがきっかけでした。


オリジナルのS.Yairi、ネックの永久保証を謳っているくらい頑丈な作りで、今でも良好なコンディションで残っている個体も多いのではないでしょうか。


残念ながらオリジナルの会社は潰れてしまいましたが・・・。


70年代当時、廉価版の安いギターを作らず、中、高級機以上のギターを製造し、実際に弾いている私は全然そう思いませんが、当時のギターマガジンに「日本製のアコースティックギターで最もマーチンに近い音がする」と紹介されたり、初期の井上陽水さんがS.YairiのYD-304を弾いていたことから、今でも哀愁と共に人気があるブランドではないでしょうか。


私のYD-303、トップはスプルース単板、サイドバックはハカランダ合板と言う仕様で、ネックが捻れていたり、決してコンディションの良い個体ではありませんでしたが、「ゴツンッ!」としか表現出来ない力強く大きくなる音には参りました。


それ以来、私のアコギの基準はYD-303です。


その後1969年製のマーチンD-45を弾いて、全て引っくり返されてしまいましたが・・・。


なんとかあの時弾いたマーチンに勝ちたいと、ギターの塗装をラッカーにしたり、ウッドバイディングにしたり、ピックガードを木製にしたり、打倒マーチンを目指しましたが、結論から言うとギターをどんなにいじっても1969年のマーチンの音にはなりません。


現在手元にあるギターはS.Yairi YD-308とYAMAKI-1200だけですが、それぞれS.YairiとYAMAKIの音で、マーチンとは別物です。


最近のマーチンを弾いても感動しないので、おそらく本家マーチンも色々高価なD-45タイプを出していますが、あの 1968年、1969年に作られたD-45に匹敵するギターを作れないのかもしれません。


戦前のオリジナルD-45なんて弾いてしまったら、ギターを辞めてしまうかもです(笑)。


とは言え、S.Yairi YD-308もYAMAKI-1200も唯一無二の音がするので、私にとっては大事なギターです。


日本の高温多湿と低温乾燥を繰り返すギターにとって過酷な気候環境で、特に単板のアコギの場合、板が割れてしまったり、ブックマッチで接着している部分が縮んで隙間が開いてしまうことはよくある話です。


私はコレクターではなく弾き倒すタイプなので、オリジナルには拘らないし、いつか自分がギターを弾けなくなって次の世代に受け継ぐためにも、お金をかけて修理をするのも厭わないスタンスのつもりでした。


バックシームの隙間

上の矢印の補強材が、板と板の間に貼られていません



先日「S.Yairi YD-308 vs YAMAKI-1200|ミリ単位で変わる」で報告した通り、YD-308のバックシームに隙間が出来たので、先月、辻さん(辻四郎さん)に修理をお願いしてギターを送りました。


素人ながら私の予想では、おそらく隙間に接着剤を流し込んで、両側からクランプで挟むだけの簡単な修理だろうと予想していましたが、辻さんに実際に見て頂くと、ギターの作りとして致命的な欠陥があるので大規模な修理になるとのことでした・・・。


YD-308は3枚の板を並べたスリーピースバックなのですが、板と板の間に裏側から補強材を貼って、将来、板同士が離れて隙間が出来ないような作りになっています(これはどんなアコギでも一緒ですね)。


私の308は、その補強材が肝心の板と板の間に貼られていないとのこと。


この状態で接着剤を流し込んで一時的にくっつけても、近い将来剥がれて、また隙間が出来てしまうとのことでした。


言われてみれば、たとえ隙間が開いても補強材が然るべき場所に貼ってあれば光が透けて見えることはありません。


補強材を剥がして再接着するにしても、内側にニスが塗ってあるので一旦ニスを剥がさないと接着剤が効かない、何れにしても一連の作業を行うにはサウンドホールから手を突っ込むだけでは出来ないので、一旦バックを外さないと作業が出来ないので、もし本当に修理するならギターを新しく作る方が簡単なくらい大きな修理になってしまうとのことでした。


これはショックでしたねー。


いくら玉石混同の昭和のアコギでも、それぞれのブランドのフラッグシップモデルクラスは間違いがないだろうと信じていたし、しかも作りと頑丈さに定評のあるS.Yairiで通常では考えられない初歩的な作りのミス・・・。


私の308はフォークブームが過ぎ去って、倒産間際の80年代に作られた個体なので、職人さんのやる気がなくなった時期に作られた個体なのでしょうか・・・。


ちょっと、私の信じていたものが崩れてしまいますね・・・。


最初から作りが悪かったYAMAKIは、どこをどうしてもそれ以上悪くなることはないので、割と大胆にレストア出来ましたが、S.Yairiは問題の補強材以外の作りは綺麗だし、しっかりしているので、わざわざバックを剥がすのは気が引けるという辻さんに、なんとか修理をお願いしました。


簡単に手をつけられる作業ではないので、時間も年内一杯見て欲しいとのことです。


YANAKIの修理費と308の修理費を足すと、辻さんにちゃんとしたギターを1本オーダー出来てしまうのではと思ってしまったりしますが、何しろYAMAKIと308にしか出せない音でもあるし、複雑な心境です・・・。


ギターは購入にもメンテナンスにもお金がかかります。


一番健康的なギターの楽しみ方は、オール合板でもよく鳴るギターを探して愛好する事かもしれません。


探すのも楽しいし、「当時安物だったのに、こんなに鳴るんだ!」という驚きもあるでしょう。


今でも比較的安いので、色々なブランドのギターを集めて弾き比べる楽しみもあるかもしれません。


趣味嗜好全般に言える事かもしれませんが、あまりこじらせるといいことはないかもです・・・。


関連記事「YAMAKI-1200 |レストア記録」






13 件のコメント

  • 新しいブログがあるのを失礼しました。早々に三回読まさせて頂きました。YD-308が製作ミスで修理ですか。驚きました。確かオーダーの最高機種ですよね。私のYD-306も一度レストアが必要かもしれません。しかしながら、お持ちの2台はそれだけの価値あるギターだと思います。もしかしたら、1969年製のマーチンD-45が購入できるくらい修理費は費やされていますか?YAMAKIを含めると越えるような。私は、1980年代の製作が減少した頃のマーチンD-28をそろそろ考えてます。一番の楽しみが、やはり、YAMAKI、ヤイリと音を比べることです。ハカランダは手が出ませんので、これくらいかなと思い、毎日、ネット上やショップに直接電話で探してます。また、ヤイリの修理している途中経過とYAMAKIの音の変化等をアップしてください。大変楽しみに待ってます❗️

    • >1969年製のマーチンD-45が購入できるくらい修理費は費やされていますか?
      流石にそこまでではないです(笑)。

      あえて80年代を狙うあたり、強いこだわりを感じます。

      手持ちのギターと比べてがっかりすることもあるかもなので、試奏してからの購入をお勧めします。

    • 続きです。YAMAKI F-1200ヤイリYD-308の音を是非とも聞いて みたいのですが、動画をアップすることはできませんか?

  • YAMAKI F-1200の動画をみさせて頂きました。マーチン系の綺麗な音色ですね。何度も聞いていたくなるうっとりする響きです。このジャパンビンテージがあれば他はいらないようにも感じます。どのような曲を多く日々弾かれてますか?または、特定のグループがありましたら教えてください。

  • 返信頂いたことで、お聞きしたいのですが、マーチン購入にあたり、実際に弾いてから購入したほうがいいとアドバイスいただきましたが、確かにマーチンとはいえ個体差が、あるとは思いますが、私はある程度マーチンという保証があると思いネットオークションありだと思ってました。個人出品の場合は危険でしょうか?1980年代のマーチンでネットで今まで探してました。今あるギターと比肩しうると思ってました。

    • 好みのギターの音色は自身の経験によるところが大きく、その都度理想の音は上書きされていくものと認識しています。

      中嶋さんも、お手持ちのギターの経験の上で頭の中で理想のマーチンの音を、ある程度すでにお持ちではないかと想像します。

      ただ、元になっているお手持ちのギターが割と曲者で(笑)、音の傾向は違うかもしれませんが、下手すると普通のマーチンよりも鳴ってしまっている可能性もあるかもしれません。

      Dー28の場合は出ている本数も多いので、もちろんネット上で売り買いを続けながら自分の欲しい音を見つける方法あるでしょうし、実店舗で試奏しながら見つける方法もあるでしょう。

      方法は人それぞれでいいと思います。

  • ありがとうございます。購入には、時間をかけてショップにも行くことにします。たぶん最後のギターにする?つもりです。たから、慎重に今あるギターの音色を越えてないと、マーチンですからならないと思ってますが、本音は今のジャパンビンテージのほうが音量があるほうがうれしいのですが。複雑ですが、ガッカリしないように、弾いてからマーチンを購入するようにします。マーチン ブランドが絶対神だと信仰し過ぎないします。

  • こんばんは。世間ではコロナの影響で外出ができない状況にあります。いかがお過ごしでしょうか?以前頂いたコメントに理想とする音のイメージを持っているとありました。確かにあります。そして、その音をこの自宅待機のなか探してみた時に遭遇したのが、マーチンD-28 35ではなくマーチン000-42だとわかりました。ネット上(外出不可により)でしたが色々聴き比べた結果です。具体的に絞りこんだのがマーチンOM42です。近い将来に念願のマーチンと今ある曲者の(笑)ジャパンビンテージ達との対決をするようになります。こんな楽しみをわかっていただけるのは貴兄しかおりませんので、つい連絡をしてしまいました。ゴールデンウィーク中に結果を聞いて頂けたらば嬉しいです。

  • ついに、マーチンMO42 2002年制 が我家にきました。まだジャパンビンテージの3本(yamaki-YM1000 yamaki-YM2000 s.ヤイリYD-306)弾き比べてみました。まだ第1回の比較なので今後気持ちが変わるかもしれませんが、今の感じのレポートです。全体の感じですが、no1は決めることができませんでした。どれが好きかは、余りにも4台とも違うのでどれもが主張してできませんでした。ただ、わかったことが一つありました。マーチンはジャパンビンテージ達よりも、2倍くらいの価格で、マーチンのフラグシップモデルに近いのですが、ジャパンビンテージは負けてなく、優劣がつけられないくらい、いいのがわかりました。マーチン信仰があったのですが静かに薄れていきました。来月にも第2回 比較を行いますがまた感じかたが変わるかもしれませんが。ギターを整理、断捨離して、4本が弾いて楽しめる限界かと思います。弾いてあげないと音が応えてくれません。
    ヤイリの修理は進んでますでしょうか?

    • お、OM-42を購入されましたか。
      000よりもスケールが長くてフィンガースタイルに向いているような印象なのですが、実際手にしてみた感じはどんな感じでしょうか?
      ギターの大きさ、音色、弾き心地で音楽の向き不向きがあるかもしれないので、色々弾き分けてみるのも面白いかもしれませんね。
      ヤイリの修理に取り掛かるのが9月くらいだそうなので、まだまだ当分先です。

  • 返信ありがとうございます。実は、購入予定はD-35だったのですが、家庭事情、威圧から、爪弾くギターにしないと騒音公害とうるさくてドレッドから方向を変えたのです。また、00042と迷いましたが、ヤイリの000-28ecモデルを持っており、(今回で処分中)スケールが長い方が馴染んでいるように感じていたので決めました。実際に使用しても、扱いやすく違和感なくほぼ満足しています。ただ、2002年製のため、まだ音には伸び代がありそうな予感です。(ビンテージは高額で手が出ませんでした)しかし、ジャパンビンテージ達の凄さ、マーチンを目指した日本の力を再認識できたことが一番の喜びです。
    ヤイリYD308は待ち遠しですね。ネットオークションで久しぶりにみました。ジャンク品で、20万越えをし最終はわかりませんが、マニアにはわかるのですね。現存するのは20本ないのではないでしょうか?是非、修理後に動画をあげてください。

  • その後、s.ヤイリの修理は進んでますでしょうか?今はYAMAKI F-1200 を弾かれていることだと想像しています。近況報告になってしまいますが、マーチンOM-42とジャパンビンテージ達との比較です。購入したばかりの時は、ジャパンビンテージ達も負けない音色だと思ってましたが、マーチンを弾いていくと音が、1音1音が際立つように大きな音になりました。不思議です。000サイズで弾きやすいため、使用頻度もあがり、s.ヤイリは休眠状態になってしまいました。ハカランダよりも確かに響いた音色です。マーチン恐るべしです。来月はジャパンビンテージ達を中心に弾くつもりです。

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    風々工房(ぷぷこうぼう) 東京出身のププ(嫁)、山形出身の旦那夫婦でインスタ漫画を描いています。 借金のあったププ母の介護、非正規雇用など色々乗り越えて、2018年に秦野市に移住しました。 社会の歯車から離れて、はたして生きていけるのか実験中です(笑)。 もしよろしければ、これまでのストーリーのインスタ漫画もご覧ください。