表紙の写真は、ププのお母さんの引越当日の実際の様子です。
私たちのこの頃の生活を一番象徴してるのではと表紙に選びました。
何週間も前から何度も何度も、
「この日に引越しますよ」
と説明したのに、引越の当日この状態だったのがあまりにもショックで、なぜか写真に収めた1コマです。
人間というものは、ショックが大きすぎると奇行に走るのかもしれません・・・。
まさか将来漫画を描くようになるとは想像もしてなかったし、まさかこの時に撮った写真が自分たちの漫画の表紙になるとは夢にも思いませんでした。
漫画を描くにあたり、この頃のことを思い出そうとすると、物理的な時間はそんなに前ではないのに、体感的には前世の記憶のように遠く感じます。
人間の脳の特徴というか、恐らく辛い記憶は忘れるようにできているのでしょう。
ただ、写真というものは生々しいもので、この写真を見ると一瞬にしてあの時に戻るというか、もっと肉体的な感覚、あの日の「日差し」や「匂い」の中にまだいるのではないかと錯覚してしまいます。
さて、色々追い詰められて同居すると言う選択肢以外無くなったのが6巻でした。
ただ、何をやるにしてもお金はかかるのです・・・。
繰上返済で貯金を全て吐き出し、自分たちのギリギリの生活を守りながら借金返済をしながら、それとは別枠で引越資金を貯めるのは至難の業でした。
唯一の希望としては、同居さえしてしまえば、引越貯金に回していたお金も借金返済に充てることができて、完済を1日でも早めることができるのではという事くらいでした。
今、「希望」と書いていて「それって希望じゃないんじゃないの?」と変な気分になったのですが、思い返すと当時の私たちにはそのくらいしか希望がなかったんですね。
引越当日は表紙の写真の通りだとして、忘れもしないのが初日の台所の出来事です。
帰ってみるとププのお母さんは、何やら生肉の味付けをしていました。
そのまま手を洗いもせずに、手に生肉から出たドリップがついたまま台所中をぺたぺた触り、挙句、塩壺にそのまま指を突っ込まれた時は心底ゾッとしました。
後にも先にもププのお母さんに対してあんなに怒ったことはありません。
私たちの同居生活は、ププのお母さんから台所を死守するところから始まりました・・・。












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