育てやすいのはF1種?
固定種のタネを植えるようになってから3年経ちました。
秦野市に引っ越してきたばかりの頃は、初めて自分の庭を持てたのが嬉しくて、ホームセンターや地元の農協で苗を購入しては、それはもう片っ端から植えていました。
その後、「どうせ育てるならなるべく健康的な野菜を育てたい!」と調べるうちに、無農薬どころか無肥料で土も耕さない自然栽培という栽培方法があり、植えるタネには「F1種」と「固定種」の2種類があるということを初めて知りました。
タネ袋に「〜交配」と書いている場合はF1種のタネだそうで、その後タネを見るたびに袋を確認するようにしているのですが、どうやらホームセンター、農協、スーパー等々、私たちが普段目にするタネや苗のほとんどはF1種のようです。
そもそも「F1種とはなんぞや?」ということですが、例えば「害虫に強いキュウリ」と「実をたくさんつけるキュウリ」を掛け合わせることで、それぞれの良い特性を兼ね備えた品種で、言い方を変えれば、人間が設計して作った品種がF1種です。
何しろそうなるように設計されているので、病気や害虫に強いのはもちろん、同じ形(規格)に育てやすく、収穫しやすいように熟する時期が同じになるのが特徴のようです。
言われてみれば苗売り場を見渡すと、驚くほど形が揃った苗がパレットの上で並んでいて、まさに「商品」という感じがします。
近所の畑を見渡してみても、ナス、トウモロコシ、落花生等々、畑に生えている段階で同じ形をしています。
スーパーに売っている野菜もきれいに同じ形をしていますが、自分で野菜を育ててみると形が不揃いで、とても商品にはなりません。
スーパーのキュウリなんてあんなに真っ直ぐできれいですもんねー。
私たち消費者も曲がったキュウリと真っ直ぐなキュウリが並んでいれば、真っ直ぐなキュウリを選んじゃいますし、自分で育てたキュウリなら少々虫食いがあっても気にしませんが、スーパーで売り物になっているキュウリで虫食いなんて見たことがありません。
私たちが毎年苦労している枝豆も、F1種の苗を植えた年は何の問題もなく収穫できましたが、固定種のタネを植えるようになった途端、カメムシが大発生して苦労するようになりました。
そんなことを言うといいことばかりのようなF1種ですが、例えばF1種のキュウリを作る場合、同じキュウリとは言え違うキュウリの品種を掛け合わせて作るので、ちゃんと育ってタネまでできるのは第一世代だけで、2世代目以降は違うキュウリの特性の間で迷ってしまうのか、タネができなかったり、ちゃんと育たないそうです。
私たちも、最初の年にF1種のバターナッツの苗を植えて、それはもう二人で食べきれないほど収穫できました。
たくさん採れたバターバッツを、普通に調理してタネの部分を他の野菜クズと一緒に庭にコンポストしていたのですが、そんなことはすっかり忘れていた翌年の春、驚いたことにバターナッツらしき双葉が生えてきました。
「2世代目のF1種の種でも芽が出るんだ・・・」
と、不思議に思って観察していると、そのままスルスルと伸びて花を咲かせ実を付けだしました。
とは言え、いくら受粉させてあげても実付きは悪く、最初の年は一株10個くらい収穫できましたが、2世代目のバターナッツは一株2個しか収穫できませんでした。
それでも美味しそうな実だったので早速割ってみると、本来タネがある場所が空洞で、タネが収まるスジのようなものは確認できるものの、肝心のタネだけありません!
これは私なりに衝撃というか、「あー、F1種ってこういうことなんだ」と理解した瞬間でした。
F1種を植える場合は、毎年苗を購入しなければいけないというのは、こういうことだったのですね。
固定種は採種地が大事?
一方、固定種はいわゆる普通のタネというか、普通にタネが出来るので自分でタネを採って毎年植えることができるという、昔ながらの普通のタネです。
ただ、この普通が難しい・・・。
購入したタネは当然その採種地で育ったタネなので、あまりにも採種地と違う気候の場所で育てようとすると、そもそも芽が出なかったり、採種地にいなかった害虫が私たちの住んでいる場所にいるのか、害虫に食べられてしまったりと、本当に購入したばかりの1年目は苦労します。
そんな固定種のいいところは、自分でタネを採って同じ場所に植え続けると、そのタネと言うか品種が進化して、その場所の気候や害虫に慣れていくので、年々発芽率が上がったり、害虫に強くなったり、収穫量が増えたりするそうです。
私たちの場合だと、最初の年のオクラは20粒のタネを植えて2株しか発芽しなかったのに、自家採種したタネを植えた翌年は、植えたタネのほぼ全部が発芽して感動しましたが、アブラムシは大量に発生したので、害虫に強くなったかどうかは実感できませんでした。
そんなわけで、固定種のタネを植える場合、まず発芽させるのが難しく、ましてやちゃんと収穫してタネ採りはまでたどり着けるのはごく僅かで、私たちの場合、成功よりも失敗した方が多いくらいなのですが、今まで購入したタネ袋に書いてある「採種地」を調べてみたら、面白い傾向が見えてきました。
自家採種までたどり着いた作物
品種 | 採種地 | |
イネ科 | ライ麦 | アメリカ |
マメ科 | 絹サヤ | 岩手 |
ソラマメ | 大阪 | |
ナス科 | トマト | 埼玉 |
アブラナ科 | からし菜 | イタリア |
小松菜 | イタリア | |
大根 | イタリア | |
カブ | 岐阜 | |
アオイ科 | オクラ | 山口 |
自家採種までたどり着けなかった作物
品種 | 採種地 | |
マメ科 | 枝豆 | 北海道 |
サヤインゲン | 中国 | |
ウリ科 | ズッキーニ | モルドバ |
アブラナ科 | カブ | 長崎 |
ブロッコリー | アメリカ | |
セリ科 | ニンジン | 長崎 |
セロリ | アメリカ | |
キク科 | 春菊 | デンマーク |
シソ科 | スイートバジル | インド |
ツルムラサキ科 | ツルムラサキ | タイ |
こうしてみると、成功した採種地は日本の本州かイタリアで、失敗した採種地は日本でいうと北海道や長崎等の本州以外の場所、海外だとイタリア以外の国のようです。
私たちの住んでいる神奈川県秦野市は、ちょうど日本の真ん中くらいで「温暖地」と言われる地域なので、我が家でタネを購入する場合、国産ならなるべく本州の真ん中寄り、海外産だとなぜかイタリアと相性がいいようなので、イタリアで採れたタネを選ぶと成功率が上がるかもです。
それにしても、私たちの選んだ大根は「大倉大根」と言う、ゴリゴリの和名の品種なのですが、採種地はイタリアなので、イタリアで大倉大根を作っているのかと思うと不思議な気分です(笑)。
ソラマメのタネ採り
昨年10月に「河内一寸蚕豆」という、一袋7粒入りのソラマメを植えました。
「河内」と言う名の通り大阪産のタネで、気候が似ているのか、買ったばかりのタネには珍しく発芽率100%で、害虫がいない冬から春にかけて成長する冬越し野菜ということもあり、何の問題もなく5月に収穫し、梅雨前の今、サヤもすっかり黒くなってタネ採りの時期を迎えました。
自家採種する場合は、食べたいのを我慢して、サヤが大きくて実付きのいい、一番美味しそうなサヤをタネ採り用に残しておきます。
マメ科の作物の根には「根粒菌」という菌が住んでいて、土を肥やしてくれるので、根っこは土の中にそのまま残して、土から上の部分を刈り取ります。
茎や葉っぱは干してそのまま緑肥に出来るので捨てるところがありません。
収穫した黒いサヤはしばらく天日干して中のソラマメを取り出し、さらに天日干して乾燥させればタネ採り終了です。
7粒から始まったソラマメですが、今年は24粒の立派なタネが取れました!
どのタネもツヤッとズッシリして頼もしいです。
ざっと4倍になったので、ちょっとした投資というか、お金もこんな風に増えたらいいのになと思ってしまいます(笑)。
立派なタネが採れたので、10月の植え付けが楽しみです。
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