いつもの散歩道を歩いているとパンチさんが顔を曇らしていました。
お伺いするとハチミツを絞ろうと様子を見に来たら、せっかく巣箱に入ったミツバチが全滅してしまったとのこと。
ミツバチは非常にデリケートな生き物で、巣箱に定着させるのも難しく、何かの理由で機嫌を損ねて巣箱から引越してしまったり、近くで農薬を撒かれただけで死んでしまうそうですが、同じ秦野市の養蜂家の方のミツバチも同じように全滅してしまったとのこと。
何か異常気象の前触れかもしれないと心配してらっしゃいました。
このまま置いておくわけにもいかないし、絞れる巣箱のハチミツを絞るので、「よかったら見にこない?」とお誘い頂き、今日は人生初の生ハチミツ絞りを体験することになりました!
通常、養蜂をする場合、セイヨウミツバチが主流らしいのですが、パンチさんの蜂はニホンミツバチで貴重とのこと。
一般に市販されているハチミツは効率よく水分を飛ばすために「加熱処理」が施されていて、ハチミツ本来の「酵素」が死活してしまっていますが、ニホンミツバチの蜜で、無濾過、非加熱というと更に希少です。
盆と正月が一緒に来たというか、健康オタクの血が騒ぎます(笑)。
ハチミツ絞りの準備
巣箱の設置日は平成29年(2017年)8月9日で今日が2019年3月24日なので、19ヶ月前にセットした巣箱ということになります。
素人の私のイメージ的では、ハチミツは毎年採れるもので、19ヶ月というと「こんなに長いんだ」と思いましたが、加熱処理をしない場合、この時間が大切で、巣箱にハチミツが溜まってもすぐに採らずに自然乾燥させるから加熱処理する必要がないとのこと。
確かに加熱して人工的に水分を飛ばした方がハチミツを採取してから出荷までの時間が短縮できるし、自然乾燥でこんなに時間がかかってはコスト的に合わないので、自然食品のお店で販売している非加熱の生ハチミツは高価になってしまうと理解できました。
やっぱり本で読むのと、巣箱をこの目で見て、実際に手で触ってみるのとでは、脳に入ってくる情報量が違いますねー。
新しい蜂達が中のハチミツに誘われたのか様子を見に来ていましたが、「ヨーイショッ!」と巣箱を持ち上げると、腰にくるくらい重いです。
相当蜜が入っているのでしょう。
これは期待が持てそうです(笑)。
パンチさんは本業が板金塗装屋さんなので、養蜂が専門というわけではなく、空いている時間にやってらっしゃる農業等の一環として養蜂もやってらっしゃるという方で、道具や蜜桶も空いている桶や工具を使って作った手作りです。
重い巣箱を新聞紙を敷いた作業台の上に置き、巣箱を密閉させていた金具や釘を外していきます。
さあ、いよいよ巣箱を開けてみます!
初めてのことばかり!|パンチさん流生ハチミツ絞り
「ガコッ」と巣箱を開けると、蜂の巣がぎっしり垂れ下がっています!
写真では表現しきれませんが、本当にすごい迫力でびっくりしました。
重みに耐えられず、下の方が割れてハチミツがトローリと滴ってきています。
あー、これがハチミツなんですね。
これぞ絶景です(笑)。
巣箱の天井部分からゴリゴリと巣を切り離し、適当な大きさに手で割って、ザルをセットした蜜桶にポイポイと入れていきます。
割った断面を見せていただくと、綺麗に並んだ六角形の層がいくつも重なった中にハチミツがぎっしり詰まっていて、もうこれでもかとハチミツが滴り落ちてきます。
「ちょっと食べてみる?」
と仰っていただいて、頂いたハチミツのたっぷり入った蜂の巣をひとかけかじってみると、ジュワッと甘くてオレンジの香りのようなフルーティーなハチミツが口の中に広がります!
オレンジのような香りと味わいを感じるのは、主に柑橘系の花がたくさん咲いていたからでしょうか。
生ハチミツが強すぎたのか、お酒に酔ったようにちょっと頭がクラクラしてきて、頂いた蜂の巣をよくみると、何やらオレンジ色の粉のような塊が下の方についています。
お伺いすると、このオレンジ色の部分はミツバチが集めた「ビーポーレン」という花粉の塊で、人間の体では生成できない必須アミノ酸や、ビタミン、ミネラルを豊富に含んでいて、花粉症にも効果があると言われているそうです。
花粉症の私には朗報ですが、栄養価というか薬効成分が高いので、あまり食べすぎてはいけないのかもしれません・・・。
ハチミツをかみしめた後、口の中にゴワっとした蜂の巣が残るのですが、これがミツロウとのこと。
「え、これがミツロウなんですか!?」
と、にわかには信じられませんでしたが、蜂の巣だけの部分をお借りしたガスバーナーで炙ってみると、溶ける溶ける、チューンと溶けてチリチリと縮んでいきます!
溶けた蜂の巣を指先で触ってみると、確かにロウソクのような手触りというか、ワックスです。
手についた匂いを嗅いでみてもワックスの香りでした。
我が家ではヘアーワックスを手作りしているので、何も考えずに普通に材料のミツロウを購入していましたが、ミツロウって、ミツバチの巣だったんですね!
ミツバチは本当に捨てるところがないというか、こんなに生活と関わっていてビックリしました。
ある程度蜜桶がいっぱいなったところで、パンチさんが、
「この後、どうやって絞ると思う?」
と、いたずらっ子のような目をして聞いてきました。
パンチさんがこういう質問をする時、私たち夫婦は当たったことがないのですが、なんとなく遠心分離機のような機械で絞るのかなと考えていると、
「蜜桶をぶら下げておくと、自分の重さで勝手に絞られてこのホースから出てくるんだよ」
とのこと。
あー、だから蜜桶の下の方にホースがついていたんですね。
それにしても自重だけで絞るなんて、絞り切れるのかしらと心配していると、
「蜜を絞りきらないで蜂の巣を巣箱に戻してあげると、またミツバチが入ってきやすくなるんだよ」
「何事も採りすぎないで自然と上手くやっていくのがコツ」
と仰います。
まさに賢人です!
私たちのような凡人は、いかに絞り切るかばかり考えていました。
「足るを知る」というか、あえて絞りきらずに自然に返す考え方があるなんて、目からウロコでした。
自然との調和って、こういうことなのかもしれません。
自分でも絞ってみました
お土産に蜂の巣の塊を頂いたので、早速自分で絞ってみます。
蜂の巣の状態で計ってみると826gありました。
空いていたボトルに茶漉しをセットして、蜂の巣をちぎって少しずつスプーンでギューッと押して絞っていきます。
我が家には巣箱があるわけでもないし、せっかく頂いた蜂の巣を、凡人の私たちは勿体無いのでそれはもう端から端まで余すところなく絞り切りました(笑)。
住環境が違うというのもありますが、私たちには賢人への道は遠そうです。
絞ったハチミツを計ってみると500gありました。
パンチさん、今回もありがとうございました。
貴重なニホンミツバチの生ハチミツ、大事に食べます。
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