キュウリ店長・・・。
嫁が最初から「鬼軍曹」ではなかったように、キュウリ店長も最初からキュウリ店長ではなかったようです。
よく彼が苦労自慢として話していた、オーナーとの逸話があります。
キュウリ店長が駆け出しの頃、その頃から彼は仕事が出来たらしく、なんでもうまくいくので少々天狗になっていたそうです。
まだオーナーも厨房に立っていた頃で、ある昼ピークにオーナーと厨房に入っていた時、キュウリ店長は足元の電子レンジを「バタン」と足で閉めたそうです。
お客さんも満席で、行列も出来ていてオーダーもパンパンの状態で、オーナーは、
「お前ちょっと来い」
と、キュウリ店長を駐輪場に連れ出したそうです。
見栄っ張りのキュウリ店長は当時1000ccの100万円以上するバイクを乗っていたそうですが、オーナーに「お前のバイクはどれだ?」と聞かれ答えると、いきなりそのバイクを蹴倒され、
「いいか、お前がやったことはこういうことだ、二度とおれの電子レンジを足で閉めるな!」
と激怒されたそうです。
飲食店を経験なさってる方なら分かると思いますが、「10分以内に提供」を売りにしている店で、厨房の昼ピークのど真ん中にオペレーションを完全に止め、駐輪場にわざわざ行ってバイクを蹴倒すオーナーの非現実感。
そして、それに感動して後々まで自慢げに話すキュウリ店長・・・。
私が働いていたお店の縮図のような気がします。
後から聞いて驚いたのですが、嫁はこの修羅の国で20代の10年間あんなに働いて、責任ばかり上がっていったのに、10年間時給が上がったこともないし、有給も1日ももらったことがなかったそうです。
それはレゴブロックになっちゃいますよね・・・。
キュウリ店長の初対面の印象は「おれは仕事出来るオーラ」が滲み出る、一見すると好青年でした。
初めて出会った彼は、朝の準備の忙しい時間に朝礼を始めました。
自分がいない間に売上が落ちたので、売上を上げるアイディアを3つ以上出せとのこと。
普段は怖いもの知らずの鬼軍曹の嫁も、キュウリ店長の前ではいつにも増してレゴブロックで、みんなの前で鬼のように怒られています。
アルバイトにそこまで求めるのもどうかと思うのですが・・・。
その頃の私には、私なりの考えがありました。
そもそも最初から独立希望ではなく、将来海外勤務を希望していた私は、「普通の独立希望の社員と同じ土俵で戦うのは得策ではない」と強く感じていました。
そのフランチャイズで厨房を任されるということは、このフランチャイズの精神論を完全に盲信して、オーナーに気に入られることを最優先に考える、「優秀な手駒」になることを意味します。
私以外の全社員は既に「優秀な手駒」として日々競争しているので、そこに私1人増えたところで、なんのアピールポイントにもならないし、同じことをやっても若い人達には敵わないと思いました。
どんなサービス業も、サービス業である限り、「お客様満足度」という言葉が出てきます。
反面、同じように出てくるのが「人件費削減」ではないでしょうか。
少ない人員で、「お客様満足度」を上げて売上も伸ばす・・・。
私には「信じれば願いは必ず叶う!」というような、非科学的な精神論にしか聞こえませんでしたが、キュウリ店長が欲しいアイディアは、この「少ない人員で、お客様満足度を上げて売上も伸ばす」を具体的にどうやって達成できるかだと理解しました。
自分の信じられない精神論をみんなと一緒に信じたふりをして、同じ方向を向いて頑張ることは出来ないし、キュウリ店長の言う精神論が後向きで暗い感じがして好きになれません。
私は、直接お客様に接するスタッフの「スタッフ満足度」も上げなければ「お客様満足度」に繋がらないと思います。
今一緒に働いているスタッフという「財産」を生かして、もっと前向きで具体的な方法はないか考えてみました。
当時私が働いていた某フランチャイズでは、昼ピークで残った揚げ物のトッピングを、社員が現金で購入して食べなければいけないとルール(この辺も後向きですよね)があり、それが嫌で私は毎日休憩時間に自宅に帰って自炊していました。
自宅に戻りがてら、店の周囲を原付で走りながら観察していると、羽田空港への乗換駅が最寄ということもあり、外国人観光客が多いことに気づきました。
私がオーストラリアに留学中、チャイナタウンでゴールデンカレーのルーを買って、いわゆる日本の家庭のカレーを外国人の友人達に振る舞ったことがあるのですが、すこぶる好評でおかわりしてくれ、一鍋分作ったカレーがすぐなくなったことがあります。
外国人にとって日本のカレーは未知で、しかも好まれたという経験が、私がこのフランチャイズを選んだ1番の理由だったりもします。
飲食業の敵はアイドルタイムと呼ばれる、昼ピークと夜ピークの間の来客が途切れる暇な時間です。
どこの飲食店でもアイドルタイムは、薄いシフトをさらに薄くして夜の仕込みや準備をしているのではないでしょうか。
私はこのアイドルタイムに外国人観光客を呼び込めれば、むしろシフトを増やして売上を上げることが出来るのではと考えました。
東京の飲食店では普通の光景になりましたが、私たちが働いていた店でも中国人、韓国人、ネパール人等の外国人スタッフが半分以上を占める店でした。
彼ら、彼女達は非常に優秀で真面目で、私は留学生のレポートを見てあげたりしていました。
というか、そういう私自身、オーストラリアの大学に留学していた時は、ネイティブの友人達のサポートがなければ卒業できなかったので、外国語で勉強することの大変さを痛いほど理解できます。
私は彼等、彼女達が自分の母国語で、自分の国から来ている観光客を接客すれば、それだけでも「お客様満足度」を向上して、売上アップに繋がると思いました。
あとは日本人スタッフです。
英語のメニューはあるものの、英語で接客できるのは私だけだったので、簡単な英語の接客マニュアルを作って教育さえすれば下地は出来ると思いました。あとは「仕掛け」だけです。
私の考えた「仕掛け」は、
- 店の入り口に可動式の「今〜の言語を話せるスタッフがいます」という分かりやすいサインを作る
- 外国人スタッフのネームプレートの下に「〜の言語で接客出来ます」と明記する
- 英語の接客マニュアルを作って日本人スタッフを教育
- 店の外に道路の反対側からでもどういう飲食店か分かる大きなポスターを作って貼る
以上の4つでした。
この「旦那の正体1、2」は私たちがインスタに投稿している漫画で、唯一「いいね」が2000を超えている漫画だったりするわけですが(笑)。
いよいよ当日の朝、私はマニュアルを印刷したり、外にポスターを貼ったりしていて少し遅れました。
遅れたと言っても、出勤時間に遅れたのではなく朝のミーティングに遅れたわけですが、こういうミーティングの時間は最初から業務外の時間で無給扱いです。
店内に入ると、また鬼軍曹のププさんが皆んなの前で叱られてて嫌な雰囲気でした。
時間をかけたくないし雰囲気も変えたかったので、英語の接客マニュアルをちゃっちゃとキュウリ店長に渡しました。
ここから後日談ですが、結局このアイディアはキュウリ店長の手柄になったのですが、手柄を自分のものにしても、プロジェクトを理解して運営しないと機能しません。
私が店舗にいた頃は効果を発揮したのですが、他の店舗に移動した後、残念ながら尻すぼみになって終わってしまいました。
組織ってそういうものですよね・・・。
かわりに私はある程度の自由を得て、最後まで厨房に入ることはありませんでした(笑)。
嫁はこの時私から「自由の匂い」を感じたようで、まもなく私たちは付き合うようになりました。
日本の組織 良い・悪いあるでしょうね。
我が家は不動産を小さく経験してます。
その1室は外国人方が賃貸しますよ、以前はネパール次はカンボジアの夫婦が賃貸予定です。
ネパールの方は本当に質素で真面目な方でした。
カンボジア夫婦もどうなるか楽しみです。
ぷぷ夫婦のように凸凹で楽しい夫婦だといいな
2つもコメントありがとうございます(笑)。
ネパールの方は、スペックが高いというか頭もいいし、落ち着いていて何事にも動じないし、
一緒に仕事がやりやすかったです。
次はカンボジアの方ですか、国際的ですね(笑)。
国際交流は色々勉強になって好きです。